2014-01-01から1年間の記事一覧
嫌いではない さりとて好きと いえぬ二人で 踏む落ち葉 (亀屋忠兵衛 『都々逸下町』)
風鈴に風がことばを教えてる (安西絵里香) 横浜山手女子高の生徒。幼い句だが、新鮮さがある。風が吹いてきて、初めて風鈴は言葉を発する、会話もできるようになる。”風鈴の澄んだ音色に耳を傾けながら、ふと「あれは風鈴がお話しているんだ」と思う” (大…
木曽の歌~鳥居峠 われわれは木の根・岩角をつたいながら、 今では人も通わない中山道の廃道を 息を切り、汗を垂らして登っていった。 下ではこるりの、上ではめぼその囀りが 深山の昼のしじまに響いていた。 峠に近く幾百年を経た橡(とち)の原始林があっ…
”きさらぎ弥生春のさかり 草と水との色はみどり 枝をたわめて薔薇(そうび)をつめば うれしき人が息の香ぞする” ー佐藤春夫 『車塵集』(しゃじんしゅう)より もとの詩は、3世紀後半の中国、魏の時代の女流詩人の一編
人生が旅と思えば重たやなスーツケースにあこがれ詰めて ーモーレンカンプふゆこ ずうーっと異郷の地、オランダに暮らす歌人。母国語を忘れまいとして思いもかけず歌が溢れだした。朝日歌壇に投稿しつづけた。退職後、手作りで私家版歌集『還れ我がうた』を…
山笑ふかの世に合図送らばや 日経俳壇(2014年3月30日 勝俣文子) ”かの世に棲む人々にこちらの無事、など知らせたい若き高校教師・・” (黒田杏子 選) もう亡父の年の倍ちかく生きてきた。思えば、若い、若い父だった。 それでも多摩にねむる父の墓…
うっとりと 時間忘れてみとれたし はなふり、光凪、菜の花浄土 (道浦母都子 『花眼の記』より) 和歌山県の西岸、紀淡海峡に面した海岸ぞいで、春秋の彼岸の中日、真西に 沈む夕日の周辺にきらきらと光の花びらが舞うようにみえる。いつでもみえ るというわ…
求めないことで、人は自由で平穏な気持ちが得られる ”人はなにも求めないななんてことはありえない。 人はいつも、求めている。 いつも求めてやまぬ存在だ。 人には 他人に求めるときと 自分求めるときがある。 自分の命を生かすために衣、食、住を求める そ…
旅にいづることにより ひとみあかるくひらかれ 手に青き洋紙は提げられたり ふるさとにあれど 安きを得ず ながるるごとく旅に出づ 麦は雪のなかより萌え出で そのみどりは磨(と)げるがごとし 窓よりうれしげにさしのべし わが魚のごとき手に雪はしたしや …