これまでgooブログで記事を書いてきました、最近記事の作成の方法が変わり、扱いに抜くくくなりました。どこで、これからは、「はてなブログ」で書くことにしました。 第一回は、「私の好きなミステリー作家」です。7月に逝去されました森村誠一さんを偲ん…
夢みたものは(立原道造) 夢みたものは ひとつの幸福 願ったものは ひとつの愛 山なみのあちらにも しづかな村がある 明るい日曜日の 青い空がある 日傘をさした 田舎の娘らが 着飾って 唄をうたっている 大きなまるい輪をかいて 田舎の娘らが 踊りを踊って…
好きな詩~八十八夜~田中冬二 詩集『青い夜道』より つめたい秋から冬を 紙袋の中でかさかさと すごして来た種よ 八十八夜が来て 君らが野良へ下りると もう暗い夜道のひとりあるきも さびしいことはなく 何となくにぎやかで 君らのはなしごえでもきこえそ…
好きな詩~わたしが一番きれいだった時~茨木のり子 わたしが一番きれいだったとき街々はがらがら崩れていってとんでもないところから青空なんかが見えたりしたわたしが一番きれいだったときまわりの人達がたくさん死んだ工場で 海で 名もない島でわたしはお…
好きな詩~青い夜道 いっぱいの星だ くらい夜みちは 星雲の中へでもはいりそうだ とほい村は 青いあられ酒を あびている ぼむ ぼうむ ぼむ 町で修繕(なほ)した時計を 風呂敷包みに背負った少年がゆく ぼむ ぼむ ぼうむ ぼむ・・・ 少年は生きものを背負っ…
好きな詩~冬の夜道 ”冬の夜道を 一人の男が帰ってゆく 激しい仕事をするひとだ その疲れ切った足どりが そっくり それを表している 月夜であった 砂砂利を踏んで やがて一軒の家の前に 立ちどまった それから ゆっくり格子戸を開けた 「お帰りなさい」 土間…
秋、人をふと立ち止まらせる 甘いつよい香りを放つ 金色の小さな花々が散って 金色の雪片のように降り積もると 静かな緑の沈黙の長くつづく 金木犀の日々がはじまる 金木犀は、実を結ばぬ木なのだ。 実を結ばぬ木にとって、 未来は達成ではない。 冬から春、…
本を読もう もっと本を読もう もっともっと本を読もう。 書かれた文字だけが本ではない 日の光、星の瞬き、鳥の声 川の音だって、本なのだ。 ブナの林の静けさも ハナミズキの白い花々も 大きな孤独なケヤキの木も 本だ。 本でないものはない 界というのは開…
また春がくるのを まってる。・・que revienne le printenmps. 雨がやむのを まってる。 運命がつながる日を まってる。 彼女との再会を まってる。 彼女からの手紙を まってる。 ぼくたちの赤ちゃんを まってる。 たのしい週末をまってる。 仲なおりのきっ…
嫌いではない さりとて好きと いえぬ二人で 踏む落ち葉 (亀屋忠兵衛 『都々逸下町』)
風鈴に風がことばを教えてる (安西絵里香) 横浜山手女子高の生徒。幼い句だが、新鮮さがある。風が吹いてきて、初めて風鈴は言葉を発する、会話もできるようになる。”風鈴の澄んだ音色に耳を傾けながら、ふと「あれは風鈴がお話しているんだ」と思う” (大…
木曽の歌~鳥居峠 われわれは木の根・岩角をつたいながら、 今では人も通わない中山道の廃道を 息を切り、汗を垂らして登っていった。 下ではこるりの、上ではめぼその囀りが 深山の昼のしじまに響いていた。 峠に近く幾百年を経た橡(とち)の原始林があっ…
”きさらぎ弥生春のさかり 草と水との色はみどり 枝をたわめて薔薇(そうび)をつめば うれしき人が息の香ぞする” ー佐藤春夫 『車塵集』(しゃじんしゅう)より もとの詩は、3世紀後半の中国、魏の時代の女流詩人の一編
人生が旅と思えば重たやなスーツケースにあこがれ詰めて ーモーレンカンプふゆこ ずうーっと異郷の地、オランダに暮らす歌人。母国語を忘れまいとして思いもかけず歌が溢れだした。朝日歌壇に投稿しつづけた。退職後、手作りで私家版歌集『還れ我がうた』を…
山笑ふかの世に合図送らばや 日経俳壇(2014年3月30日 勝俣文子) ”かの世に棲む人々にこちらの無事、など知らせたい若き高校教師・・” (黒田杏子 選) もう亡父の年の倍ちかく生きてきた。思えば、若い、若い父だった。 それでも多摩にねむる父の墓…
うっとりと 時間忘れてみとれたし はなふり、光凪、菜の花浄土 (道浦母都子 『花眼の記』より) 和歌山県の西岸、紀淡海峡に面した海岸ぞいで、春秋の彼岸の中日、真西に 沈む夕日の周辺にきらきらと光の花びらが舞うようにみえる。いつでもみえ るというわ…
求めないことで、人は自由で平穏な気持ちが得られる ”人はなにも求めないななんてことはありえない。 人はいつも、求めている。 いつも求めてやまぬ存在だ。 人には 他人に求めるときと 自分求めるときがある。 自分の命を生かすために衣、食、住を求める そ…
旅にいづることにより ひとみあかるくひらかれ 手に青き洋紙は提げられたり ふるさとにあれど 安きを得ず ながるるごとく旅に出づ 麦は雪のなかより萌え出で そのみどりは磨(と)げるがごとし 窓よりうれしげにさしのべし わが魚のごとき手に雪はしたしや …
わたしが一番きれいだったとき(茨木のり子) わたしが一番きれいだったとき街々はがらがらと崩れていって とんでもないところから青空なんかが見えたりした わたしが一番きれいだったとき まわりの人達が沢山死んだ工場で 海で 名もない島で わたしはおしゃ…
”春宵の酒場にひとり酒啜る(すする)誰かこんかなあ誰あれもくるな” ー石田比呂史 『九州の傘』 今の季節は、冬なのだから上五は、冬惜しむあるいは年惜しむでもいいかと、も思う。しかし、春愁ということばもあり、そこへつながる春宵が、やはりいいかと思…
幼きは幼きどちのものがたり葡萄のかげに月かたぶきぬ ー佐々木幸綱 歌集『思草』より 幼い子が幼いもの同士で、おしゃべりを楽しんでいる。微笑ましい風景。 こちらまで、なんとも爽やかな気分になります。
墨すれば宛てたき名あり月今宵 ー谷口桂子 硯を出してきて墨をする。墨の香りが立ち上ってくる。一片の封書をしたためようかと思う。送る相手は、あの人。(もう冬に入ったのに、秋の句、お許しいただきたい。素敵な句に巡りあったので、書き留めておくこと…
恋ともちがふ紅葉の岸をともにして ー飯島晴子 桜紅葉か柿紅葉か。それはともかく、紅葉明かりの岸辺の道を二人で歩きました。ふたりは恋人というわけではありません。しかし不思議な気持ちで。 ほのかな好意は、抱きあっているのではないでしょうか? 恋へ…
繭(まゆ)の中もつめたき秋の夜あらむ (木下夕爾(ゆうじ)) 晩秋の季節感が、しみじみ伝わってきます。秋惜しむの感があります。 昔、ある人から贈られた句。もう逝ってしまった。
とまるべき宿をば月にあくがれてあすの道行く夜はの旅人 ー京極為兼 「玉葉集」巻八 旅歌 何日もかかる旅の道のり。今夜の宿はそこにあるが、月光を浴びて 明るい道を楽しく歩いてみたくなり、歩き続けることにした。車も 道端の照明もない時代、こんな旅の…
紅葉(もみじ)してそれも散りゆく桜かな ー与謝蕪村 『詩華断章』(竹西寛子)に書かれていたエピソードを。著者が、円地文子と列車の旅をともにした時、円地文子が問わず語りに言ったことば、 ”このごろはものを知らない人が増えて、しかも知らないことを…
”木を植えし男の墓に木の実降る” (鈴木貞雄) トヨタ中興の祖とされたトヨタ自動車最高顧問の豊田英二氏が亡くなられた。トヨタ自動車とトヨタ自動車販売の「工販合併」を成し遂げ、カローラを市場に送り出してモータリゼーションの時代を牽引した。196…
(散歩道の酔芙蓉、まだ密やかに咲いています) 五線紙にのりさうだなと聞いてゐる遠き電話に弾むきみの声 ー小野茂樹 彼の相聞歌は、1960年代に多くの人に愛唱されたが、わずか34歳の若さで長逝しました。そのほかの歌、 あの夏の数かぎりなきそして…
都々逸もなかなか洒落ています 女房にゃいえない ほとけのために 秋の彼岸をまわり道 すみれつむ子に 野の道問えば 蝶のゆくへを 花でさす