ゆらぎの詩歌日記

好きな詩や歌、俳句などについて語ります

好きな詩~冬の金木犀

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秋、人をふと立ち止まらせる

甘いつよい香りを放つ

金色の小さな花々が散って

金色の雪片のように降り積もると

静かな緑の沈黙の長くつづく

金木犀の日々がはじまる

金木犀は、実を結ばぬ木なのだ。

実を結ばぬ木にとって、

未来は達成ではない。

冬から春、そして夏へ、

光をあつめ、影を畳んで、

ひたすら緑の充実を生きる、

葉の繁り、重なり。つややかな

大きな金木犀を見るたびに考える。

行為じゃない。生の自由は存在なんだと。

        (長田弘 『最後の詩集』より)