ゆらぎの詩歌日記

好きな詩や歌、俳句などについて語ります

好きな歌~『ポケット詩集』より(そのニ)

(系図 三木卓

ぼくがこの世にやって来た夜

おふくろはめちゃめちゃにうれしがり

おやじはうろたえて 質屋へ走り

それから酒屋をたたきおこした

その酒を呑みおわるやいなや

おやじは いっしょうけんめい

ねじりはちまき

死ぬほどはたらいて その通りくたばった

くたばてからというもの

こんどは おふくろが いっしょうけんめい

後家のはぎしり

がんばって ぼくを東京の大学にいれて

みんごと 卒業させた

ひのえうまのおふくろは ことし六十歳

おやじをまいらせた 昔の美少女は

すごくふとって元気がいいが じつは

せんだって ぼくにも娘ができた

女房はめちゃくちゃにうれしがり

ぼくはうろたえて 質屋へ走り

それから酒屋をたたきおこしたのだ