(北斎 燕と紫陽花)
さみだるる一灯長き坂を守り (大野林火)
長い坂に一つだけ街灯があって坂を照らしている。その姿はいつも変わらないのに、さみだれの中で灯の輪をまとい静かに立っている。坂をひとり守っているかのように。
この歌に、言志四録(言志晩録第13条)の一節を思い出します。
”一燈を提げて暗夜をゆく
暗夜を憂れうるなかれ
ただ一燈を頼め”
この一鐙(一灯)は人によって違うでしょう。「夢」、「希望」あるいは「愛」。人によって違うでしょう。しかしいつも自分の気持ちをしっかりもってゆけば、よい結果が生じるであろう、というのが意味するところです。